2016/04/05
新しく始まる越境ECの新税収制度は日本企業への影響はあるのか
前回に引き続き、ECについて
中国で新制度 開始
中国の財政部は越境ECに関する税制度改革を断行し、4月8日から新たな制度をスタートさせることを公表しました。その新制度というのは、中国の消費者が越境ECサイトで商品を購入した場合「しっかり税金を徴収すること」というもの。
この新制度は商品によって実質増税になったり、減税になったりするケースが生まれるらしいですが「税制度改革=中国向けECが冷え込む」なんて悲観的な考えではありません。どちらかというと、中国政府自身が越境ECという新たなビジネスを活用し、税関の検閲がきちんと届く範囲内で暫定的に海外商品を国内に流通させる仕組みを提供するという思惑があるからです。
つまり中国政府が「越境ECに力を入れていく」と宣言したのだと思います。
越境EC税制変更のポイント
・1度の購入金額上限を2000元まで引き上げ(現状は1000元) 2000元=約34,542円(4月4日時点)
・1人の年間購入金額の上限は2万元(現状通り)
・購入金額の上限以下の購入商品に関し関税率は0%とする。ただし、上限金額を超える場合は一般貿易と同じ税率を適用する。
・輸入に関する増値税を30%減額し、すべてに適用(増値税17%×70=11.9%)
・消費税がかかる場合(商品によっては消費税がかかるケースがある)、30%減額で適用する(消費税30%の商品の場合、30%×70%=21%)
・行郵税を廃止し、現状の個人輸入関税50元までの免税措置を廃止
行郵税が廃止され、免税範囲がなくなることが大きな変更点となります。商品によっては実質減税となったり増税となったりします。
現状の運用状況
「行郵税」やら「増値税」など中国の税制度には、日本人になじみのないワードがあります。言葉を解読すると、主に中国では物販(海外からの輸入)において下記の税金が発生します。
税の種類 | 内容 |
関税 | 中国に輸入される商品に対して中国政府より課せられる税金。いわゆる一般的な関税。 |
増値税 | 流通段階で商品に対して課税される税金。 日本でいう消費税に当たるもの。
増値税は基本税率が17%となっています。 (生活インフラの穀物、食用油などの特定の品目への増値税には低減税率13%が適用される) |
消費税 | 特定の嗜好品や贅沢品に対して、工場出荷時か輸入時に課税される税金。品目によって3%~45%が課税される。
ちなみに、越境ECなどで売れ筋のカテゴリである化粧品は30%の消費税がかかる。 日本の酒税などに類似する、一部の「贅沢品」だけにかかる特別税。 |
行郵税 | 個人携帯輸入物品(個人が海外から買ってきたもの)や個人輸入輸送品(個人輸入したもの)に対して課税される税金。
商品ジャンルにより10%~50%が課税。 今の越境ECではこの行郵税が課税の基本となっている。 |
以上が必要なワード。これらを踏まえて現状の体制を解説 ↓
中国向けに商品を送る場合は「一般貨物」「個人輸入」の2通りに分類されます。「一般貨物」は、企業から企業に荷物を送る、「個人輸入」は中国の消費者が海外のECサイトで購入というイメージ。
1. 一般貨物の場合・・・貿易としての扱いとなり、中国に輸入する際は「関税」「消費税」「増値税」の3種類の税金が課せられる。商品検査、植物検査、衛生検査を受ける必要があります。
2. 個人輸入の場合・・・郵便物や手荷物などに対する管理が対象。「行郵税」が課せられる。自己使用や合理的な数量ではないと判断された場合は、貨物としての扱いとなる。
一般貨物の場合、多くのケースで中間流通分のマージンが販売価格に転嫁されます。「関税」「消費税」「増値税」に加えて、流通分のコストなどが上乗せされるので、最終的には越境ECで購入した方が安い、という構図になっています。また、課税額が50元以下であれば免税になるという規定もあり、「一般貨物」と「個人輸入」の価格差が生じていました。そのため、以下の内容で越境ECの税制改革が始まるようになりました。
越境ECの取引は貿易の属性が備わっており、「行郵税」を徴収しても全体的な税負担が、国内販売されている一般貿易輸入貨物や国産貨物の税負担レベルより も低い。不公平な競争を形成した。これにより、政策として越境EC小売輸入商品に対して貨物に応じて「関税」「増値税」「消費税」を徴収する。(中国の財政部の発表を要約)
気になる影響は?
1.新制度で今までよりも減税となるジャンルに関しては、販売が伸びるので購入上限の引き上げも好影響
2.低価格商品は実質増税となりますが、一般貿易に課せられる税率とは差があるため、引き続き越境ECのメリットは大きい
3.直送モデル(EMS)は、取引限度額が上がったことにより個人輸入貨物の検査が強化されることが考えられるので、すべての越境ECの流通に対して課金が可能になる。より直送商品に対する課税(検査)が厳しくなる可能性が浮上
4.保全区の活用から直送モデルに一部シフトするという見方もあり。だが2016/6/1から、中国向けEMSの料金値上げなどもあるため、保全区活用から直送へシフトするとは考えにくい
5.一般貿易と関税の課税に関しての差は縮まったが、それ以外の「商品申請費用」「申請資料」の作成の手間、「中間流通業者利益」などを考えるとまだまだ越境ECモデルの方が有利。今まで通り、直送に加え、保全区を活用した越境商品は流通量が拡大すると考えられる
参考資料 【詳報】中国でついに始まる越境ECの新税収制度。増税? 減税? 日本企業への影響は?
越境EC特化運用カートシステム Launchcart
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スターフィールド編集部
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