2019/09/30
磨き抜かれた組織構造
はじめに
今回取り上げる本は大賀康史さんの「最高の組織──全員の才能を極大化する」です。
著者の大賀さんは株式会社フライヤーの代表取締役です。本の要約アプリ「Flier」は皆さんもご存知ではないでしょうか。
本書では会社という組織の役割は何なのか、どのような組織を目指すべきなのか、どのように理想の組織を形成していくのか、について書かれています。
会社という組織
皆さんは組織についてどのようなイメージを持っていますか?
様々あると思うのですが、私の場合はスポーツのチームのようなものではなく、会社や団体のような堅く共通の目的を持つ集団のようなイメージがあります(もちろんスポーツのチームも勝利や喜びを分かち合うという目的がありますが)。
会社という組織が本書の指す組織です。
どのようにすれば会社を構成するメンバーがモチベーションを高められるのでしょうか。
その命題は時代の変化と共に変化しています。
近年、昇給や昇格のような外的報酬だけではメンバー1人ひとりのモチベーションを維持することは難しくなっています。
外的報酬に加え、成長や充実、やりがいのような内的報酬がメインとなってモチベーションを上げていくのです。
本書では会社の構造に注目し、どのような組織が最高の組織となり得るのかを中心に話が進んでいきます。
ピラミッド型構造の持つ問題点
ピラミッド型構造のメリットとデメリット
日本の多くの会社はピラミッド型の組織を形成しています。
職能別や事業別などの組織はこれに該当します。
『ピラミッド型構造』
ピラミッド型のメリットは組織が巨大になっても統率を取りやすいことです。しかし、当然デメリットもあります。
1つ目は上層部に能力がない又はやる気がない人がいると、その下層メンバーのパフォーマンスが低下してしまうことです。
2つ目に「階層組織の構成員はやがて有効に仕事ができる最高の地位まで達し、その後さらに昇進すると無能になる」というピーターの法則が当てはまるということです。
これらから意欲が足りない人がいることで無能になってしまう人が多く生まれてしまうのです。
ピラミッド型構造の対策
ピラミッド型の対策として以下の3つが挙げられます。
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・採用活動に注力し、他者に悪影響を与える人材をそもそも採用しない。
・組織長の評価に人材育成に長けているかも加味する。
・部門長以外の役職を無くす。
1つ目について、1人のマイナスが他者に影響してしまうのがピラミッド型の特徴です。なので、プラスの影響を与えられる人であるという事は最低限必要と言えます。
2つ目について、組織長の役割を考えれば当たり前なのですが、トップセールスマンが必ずしも営業部長に相応しいとは限りません。メンバーをサポートできる人が組織長になることで下層にあたるメンバーを活かすことが出来ます。
3つ目について、ピラミッド型で情報のスピード感を出すには不要な情報共有を防ぐことが有効です。責任を無闇に作らないことで情報を円滑にすることが出来ます。
その他の組織構造
組織構造はピラミッド型だけではありません。本書では他に大きく3つ挙げられています。
マトリクス型構造
マトリクス型構造とは、それぞれのメンバーが2軸で組織に所属するというものです。
コンサル業界ではこの構造がよく用いられ、1軸目は業界知識に基づく業界別組織、2軸目はスキルに基づくスキル別組織となっているようです。このように2軸にすることでメンバーの配属は非常に柔軟になります。
しかし、組織長が複数存在することになるのでメンバーは判断が難しくなります。
対策として、メンバーの自立性を高めることが必要です。そうすることで組織のポテンシャルは最大限引き出されやすくなります。
『マトリクス型構造』
文鎮型構造
文鎮型構造とは、1人の組織長に対して多くのメンバーが並列に所属します。
これは究極にフラットな組織として考えられます。
一方で、この構造には大きな問題点があります。それは文鎮部分、つまり組織長に情報が集まりすぎてパンクしてしまいがちになることです。よって、多くの組織で普遍的に取り入れられるものとは言い難いです。
『文鎮型構造』
輪を描く組織
この輪を描く組織は上に紹介してきた既存の組織形態とは大きく異なります。
そもそも、人間関係において上や下はないのです。全て同等に尊い存在であるというのが、この輪を描く組織の前提になります。真の理想の組織構造はこれであると筆者は主張しています。
輪には頂点がなく、誰も前に出ず後ろにも下がりません。共通の目的も持ち、各メンバーがそれぞれ好きなことや得意なことを役割として、集まった結果、自然に組織が動くことが出来るのが理想なのです。
『輪を描く組織』
最高の組織の前提条件とは
様々な組織構造を紹介しました。
どの組織構造でもデメリットがありましたが、その対策は共通しているのです。
それは主体性の強い組織であるという事です。自立性のあるメンバーが集まると、組織は目まぐるしい成長を遂げることが可能になります。
では、主体性の強い組織を作り上げる条件は何なのでしょうか?筆者は本書の中で3つ条件を挙げています。
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・お互いに信頼し合い、大切にし、生き方を理解している。
・自律的に動けるセルフスターターである。
・トップが責任を取る覚悟をする。それをメンバーに伝える。
それぞれの条件について、簡単に説明をします。
①相互に理解をすることで自分の生き方を主張することが出来ます。相手を理解することで自分も理解してもらうことが実現されます。
②組織が主体性を持つには構成するメンバーも同様に主体性を持っている必要があります。
反対に、フリーライダーには居心地が悪い組織であるとも言えます。
③組織全体のトップは、メンバーが自律的に動いた結果の責任を自身が取る、という覚悟があり、それを伝えていることが組織への信頼感につながっていきます。
まとめ
組織には様々な構造があり、当然どの組織構造も一長一短です。
最高の組織(主体性のある組織)になるためにはメンバーの主体性が発揮出来る環境作りが必要となります。組織作りに正解はないということです。
本書を通して、是非皆さんもご自身の所属する組織について考えてみてください。
Author Profile
スターフィールド編集部
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