海外取引するには

はじめに
日本国内の市場が少子高齢化や人口減少の影響で縮小傾向にある中、多くの企業が海外市場への進出を視野に入れています。特に中小企業やメーカーにとって、「海外取引」は新たな販路を開拓し、事業を拡大するための大きなチャンスです。 しかし、海外との取引には言語の壁、法制度の違い、商習慣のギャップなど、国内取引とは異なる多くの要素が関わります。そのため、何から手をつければよいか分からないという企業も少なくありません。
本記事では、「海外取引を始めたいが、具体的にどうすればいいのか分からない」という企業に向けて、海外取引の基本から、必要な準備、商談での注意点、越境ECの活用方法、販路拡大のステップまでを体系的に解説します。
海外取引とは
「海外取引」とは、日本国内の企業が海外の企業・個人と商品やサービスの売買を行うことを指します。ビジネスの形態によって「輸出入取引」「海外委託生産」「ライセンス契約」「現地法人設立」などさまざまなパターンがありますが、この記事では、「自社の商品を海外で販売する」という視点からの海外取引を中心に解説します。
なぜ今、海外取引が注目されているのか
- 国内市場の縮小: 日本では少子高齢化により消費者の数が減少しています。今後もこの動きが続いていくと予想されており、安定した成長を維持するには外に目を向ける必要があります。
- 海外市場の拡大: ASEAN諸国や中東、アフリカなど、急速に経済成長している国が多く存在します。特にアジア市場は日本製品への信頼も高く、参入のチャンスが大きいです。
- 越境ECの普及: インターネットと物流網の発展により、従来のように商社や代理店を介さなくても、企業や個人が海外に商品を直接届けられるようになりました。
海外取引の形態の例
海外取引には、自社のビジネスモデルや商品特性に合った方法を選ぶことが成功の鍵です。
海外取引するために必要なこと
海外取引は、国内取引とは異なるリスクや準備が必要です。以下の点をしっかりと整備しておくことで、スムーズな海外展開が可能になります。
(1)法規制・認証の確認
国によっては、輸入規制や認証制度が存在します。例えば、化粧品なら「PIF(Product Information File)」が必要だったり、食品なら「輸入許可」や「成分表」が求められる場合があります。
対応策:
- ターゲット国の規制を調査
- 必要な証明書類や登録手続きの準備
- 商工会議所やジェトロ、支援事業者に相談
(2)商品パッケージ・ラベル対応
国によっては、成分や使用方法の表示が義務付けられている場合があります。言語表記の義務、バーコードの規格なども確認が必要です。
対応策:
- 多言語対応パッケージの設計
- 現地語でのラベル作成
- 文化的配慮(色・デザインなど)
(3)通関と物流の知識
輸出を中心に考えた場合、海外発送には「輸出申告」「通関書類」「関税」などの知識が不可欠です。国によって必要な書類や関税率も異なります。
対応策:
- 輸出入に強い物流業者をパートナーにする
- インコタームズ(FOB、CIFなど)の理解
- 貿易保険の加入
(4)決済手段の整備
為替変動リスクや支払い遅延のリスクも考慮し、複数の決済手段を用意しましょう。特にBtoBでは信用状(L/C)やT/T決済がなどがあります。
対応策:
- 前金制の導入(初回取引)
- PayPalやWiseなどのサービス活用
- 外貨口座の開設
(5)営業・サポート体制
英語や中国語といった多言語対応や、時差への対応も必要です。問い合わせに即応できる体制を整えることで、信頼感が高まります。
対応策:
- 外国語対応可能な営業・カスタマーサポートの配置
- マニュアル・FAQの整備
- 海外顧客専用ページの設置
海外企業との商談で質問されること
初めての海外商談では、以下のような質問をされるケースが多くあります。これらに的確に答えることで、相手企業からの信頼を獲得しやすくなります。
事前にこうした質問に対する想定問答集(Q&A)を用意し、商談時には外国語の資料を提示できると非常にスムーズです。
越境ECの販売実績をアピール
越境ECは、海外取引の第一歩として非常に有効です。ShopeeなどのECモールを活用すれば、小ロットでの販売実績を積みながら市場の反応を確認できます。 たとえば、以下のようなポイントは商談時のアピール材料になります。
- 月間売上額: 「Shopee台湾で月商〇〇万円」
- 販売国数: 「ASEAN5か国で販売実績あり」
- レビュー評価: 「レビュー平均4.7以上」「レビューコメント」
- リピーター率: 「購入者の30%がリピート」
- 物流体制: 「倉庫と提携し、3営業日以内発送可能」
これらのデータは、商品力だけでなく、企業としての信頼性・対応力をアピールする材料になります。また、ECでの販売経験は、現地パートナーとの代理店契約や卸交渉の際にも有利に働きます。
海外取引のステップを分けて拡販
海外進出は段階的に進めることが重要です。一度にすべてを実現しようとすると失敗のリスクが高まるため、フェーズごとに着実に展開しましょう。
ステップ1:越境ECで販売テスト
• 小ロット、低リスクで市場テストが可能 • 消費者の反応、価格帯、ニーズを把握 • 商品ページや広告運用でマーケティング力を高める
ステップ2:現地バイヤーとのBtoB取引
• 商談会、展示会、商工会議所などのイベントに参加 • 実績を背景に商談を進め、初回は小ロット取引から • 取引条件の明文化(納期・価格・返品条件)
ステップ3:代理店契約・現地法人の検討
• 現地パートナーを通じた販路拡大 • 現地の消費者対応(カスタマーサポート、返品交換) • 法人設立・現地倉庫導入により安定供給を実現
ステップ4:現地ブランド展開
• ローカライズによる製品開発(パッケージ・機能) • SNS、インフルエンサー、現地広告を活用した認知拡大 • ECと実店舗を連動させたオムニチャネル戦略
段階を踏んで海外展開を進めることで、無理なく収益化を図る道が見えてきます。
おわりに
海外取引は、ただ商品を売るだけではなく、文化や商習慣、法規制など多くの「違い」を乗り越える必要があるチャレンジです。しかし、しっかりと準備を行い、相手国のニーズを把握したうえで取り組めば、日本企業にとって非常に大きな成長機会となります。
まずは、小さな一歩から始めてみましょう。越境ECで販売を開始する、国際展示会に出展してみる、海外商談会に参加する。そうした一歩が、グローバル市場への扉を開くきっかけになります。 準備8割という言葉がありますね。海外取引にもこの言葉が当てはまります。さらに求められることは、準備をしっかり行いつつ、クイックに動くことです。
自社の製品・サービスは、まだ見ぬ世界のどこかで必要とされています。その可能性を広げる第一歩として、今日から海外取引の準備を始めてみませんか?
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Author Profile

MAKOTO TAJIRI
-越境ECコンサルタント- 貿易・国際物流分野において、営業・新規ビジネス開発・貿易実務に従事。 国際物流企業→総合コンサルティングファームを経てスターフィールド入社。 日本企業の海外輸出相談経験を持つことから、貿易・国際物流・事業構築を得意分野としています。 趣味はスイーツ(食べること専門)、愛犬と散歩、ドライブ。
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