米国の非課税基準額(デミニミス)ルール廃止について

米国の非課税基準額(デミニミス)ルール廃止を受けての今後の動き方とは
日本の越境EC事業者への影響
800ドル以下の少額貨物の輸入に対し、関税支払いの免除、簡易的な方法で輸入通関ができるデミニミスルールが撤廃した今あらためて注目されているのが「東南アジア向け越境EC」。 販路をアメリカからアジア市場へと移行する動きがさらに加速しています。
今回は、そんなデミニミスルール廃止による日本の越境EC事業者への影響についてわかりやすく解説します。
まずはデミニミスルール廃止の背景と廃止から発効までの流れをPRtimesの記事を参考に確認していきましょう。
<背景>
米国政府は2025年7月30日に大統領令を発表し、8月29日以降、すべての輸入貨物に対する「デミニミス(非課税基準額)」を廃止することを決定しました。これにより、従来800米ドル以下の輸入品に適用されていた免税措置が終了し、米国向けのすべての荷物に関税および消費税が課されます。
<タイムライン>
7月30日:トランプ大統領令により、デミニミスルールが廃止予定発表
8月15日:米国税関・国境警備局(CBP)が国際郵便に関するガイダンスを公開
8月25日:日本郵便が、米国宛ての国際郵便小包・EMS(物品)の一時引受停止を発表
8月29日:デミニミス廃止が正式に発効
1)PRtimes "米国の非課税基準額(デミニミス)ルール廃止による日本の越境EC事業者への影響について" https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000030646.html?utm_source=01%EF%BC%BF%E3%83%A1%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%82%AC%E9%85%8D%E4%BF%A1%E7%94%A8&utm_campaign=80e37232c5-EMAIL_CAMPAIGN_2020_06_23_05_58_COPY_01&utm_medium=email&utm_term=0_867510259f-80e37232c5- (参照 2025-09-03)
これまでアメリカに輸入される商品は、 800ドル以下であれば関税免除というルールが適用されており、日本からの越境販売においても価格競争力を確保する重要な仕組みでした。
しかしこの制度は今後、すべての国に対して適用されなくなります。
つまり、日本から発送される800ドル以下の商品であっても、関税が課される時代に突入するのです。
【小額免税制度停止がもたらすインパクト】
この制度変更が意味するのは、単なる「関税の免除」ではない。
-
消費者価格の上昇: これまで「免税」で実現できていた低価格が維持できなくなり、消費者の購入意欲に影響します。
-
販売戦略の見直し: ShopifyやAmazonを活用して「米国向け」をターゲットにしていた日本メーカーは、価格設定や販売チャネルを再考せざるを得ません。
-
スピード感のある実施: 7月30日の大統領発令による政策変更から8月29日の正式発効までわずか1ヶ月でした。 これにより多くの事業者が現在も対応が困難と言われています。
これまで米国市場で恩恵を受けていた「小額免税制度」という前提が失われる以上、事業環境は根本的な変化の真っ只中と言えるでしょう。
【日本の越境EC企業が抱えるリスク】
-
市場依存リスク: 米国依存型の事業モデルは、制度変更によって一気に収益基盤が揺らぐ危険性があります。
-
コスト増リスク: 関税に加わると、トータルコストが格段に跳ね上がります。
-
制度変更の急速性リスク: 規制や課税強化は今回のように突然実施されることが多く、数か月単位で事業環境が一変する可能性があります。「アメリカ一本足打法」に頼るのは、もはや高リスク戦略になりつつあります。
【新たな市場としての東南アジア】
Shopeeを例に
米国市場のリスクが高まる一方で、新たな販路として東南アジア市場が注目されています。
-
人口増加と中間層拡大: 若年層人口が多く、今後も購買力のある中間層が拡大していく見込みです。
-
日本製品への高い信頼: 食品・化粧品・日用品など、日本製品は「安心・高品質」のブランドとして広く認知されており、現地消費者から高い支持を得ています。
-
規制が比較的緩やか: アメリカのような急激な免税制度停止リスクは低く、比較的柔軟な制度のもとでスムーズな参入が可能です。特に、東南アジア最大級のECモールである Shopee は、日本企業にとって参入ハードルが低く、販路開拓に適したプラットフォームです。
【まとめ・アクション喚起】
アメリカ頼りの越境ECは古い?!
今回の「小額免税制度の全面停止」は、日本を含む全世界の越境EC事業者に影響を及ぼします。 これまでのように「800ドル以下は免税だから安心」という前提は通用しなくなりました。 米国依存型のビジネスモデルに頼るのは危険です。 リスク分散と成長戦略の両立には、東南アジア市場への進出が不可欠です。 Shopeeを活用して今のうちに販路を確保することこそが、これからの時代を勝ち抜くための現実的な選択肢です。 「米国依存」から「多市場展開」へ。今こそ、日本企業が新たな一歩を踏み出すタイミングです。
Author Profile

Y.TANAKA
大学卒業後、教員を経て、人材派遣会社の営業をやっておりました。好きなものは、大豆製品とチョコレートです。動物も大好きです。
SHARE