失敗の科学
はじめに
『失敗の科学』(原題:Black Box Thinking)を読んでみました。本書は失敗をいかに活用し、成功へと導くための学びと考え方を示しています。失敗を恐れるのではなく、それを成長の機会として捉えることの重要性を説いており、航空業界や医療業界、ビジネスの成功事例や失敗事例を交えながら、なぜ失敗が避けられないのか、そしてそれをどのように組織や個人が前進するためのエンジンとして使うべきかについて述べています。
失敗を避ける文化とその問題点
失敗を避けようとする文化が、逆に大きな問題を引き起こすことがあります。医療業界では医療ミスが多発する一方で、その原因究明や改善が進まないケースが多く、その理由としては失敗が隠蔽されるためです。多くの組織や人々は失敗を恥と感じ、その結果、ミスを公に認めず、改善のための行動を取らない傾向にあります。これは「閉鎖的な思考」と呼ばれ、失敗を無視し、自己防衛に走る姿勢です。このような姿勢は、失敗を繰り返しやすくし、イノベーションの阻害要因となります。
ブラックボックス思考
「ブラックボックス思考」は、航空業界の安全性向上の方法に着目しています。航空機が墜落した際、ブラックボックス(飛行データと音声を記録する装置)が事故の原因究明に役立つように、失敗を隠すのではなく、徹底的に調査し、問題の根本を明らかにすることで、将来の成功に役立てるという考え方です。航空業界は、失敗から学び、安全性を高めるシステムを構築しており、このプロセスが他の業界にも応用できると述べています。
成功への道:試行錯誤と改善
成功者や大企業の多くは、試行錯誤を通じて成長してきていると書かれています。例えば、科学の分野では、仮説を立てて実験を繰り返し、失敗から学ぶことが進歩の基本です。このアプローチは、エジソンの電球開発や、スティーブ・ジョブズの数々の失敗からの復活など、多くの成功者の事例にも見られます。彼らは、失敗を単なる「過程」と捉え、それをもとに改善を繰り返すことで大きな成功を収めています。
心理的安全性とオープンな文化
本書では、成功するためには、個人や組織が「心理的安全性」を持つことが必要であるとも述べています。これは、失敗を恐れず、失敗を素直に共有できる環境を作ることで、チームや組織がより効果的に学び、成長できるという考え方です。たとえば、Googleの研究でも、心理的安全性が高いチームほど、イノベーションやパフォーマンスが高いことが示されています。
閉鎖的思考から開放的思考へ
閉鎖的思考とは、失敗を自分の能力や価値の否定と捉えることで、それを隠そうとする反応を指します。一方、開放的思考は、失敗を受け入れ、それを学びの機会と捉える姿勢です。この違いが、成功と失敗の分かれ道となります。開放的思考を持つことで、個人も組織も改善に向けた具体的なアクションを取りやすくなり、最終的に成功を掴む確率が高まると述べています。
失敗を活用するための具体的なステップ
失敗から学ぶためには、次のような具体的なステップが有効であるとされています。
- フィードバックを求める:失敗を隠さず、外部からのフィードバックを受け入れることで、客観的な視点を持つことができる。
- 実験精神を持つ:リスクを恐れず、実験や試行錯誤を繰り返すことで、次第に成功に近づく。
- エゴを捨てる:失敗を個人の能力や価値の否定と結びつけず、学びの一環として捉える。
- データを活用する:失敗のデータを積極的に分析し、その改善に役立てることで、より効果的な対応策を見つける。
おわりに
『失敗の科学』は、成功を求める上で失敗を避けて通ることはできないという現実を受け入れ、失敗を成長の一部と捉えるべきだと強調しています。失敗を恥ずかしいもの、隠すべきものとするのではなく、それを学びの機会として前向きに活用することで、成功への道が開けるというメッセージを本書は伝えています。たくさんの事例が載っていたので是非読んでみてください。
(参考文献) マシュー・サイド, 失敗の科学, 株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン, 2016
Author Profile
MAKOTO TAJIRI
-越境ECコンサルタント- 貿易・国際物流分野において、営業・新規ビジネス開発・貿易実務に従事。 国際物流企業→総合コンサルティングファームを経てスターフィールド入社。 日本企業の海外輸出相談経験を持つことから、貿易・国際物流・事業構築を得意分野としています。 趣味はスイーツ(食べること専門)、愛犬と散歩、ドライブ。
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