越境ECおすすめマーケット ~シンガポール~

はじめに
近年、越境ECの販路として東南アジア市場が注目を集めています。中でもシンガポールは、高い購買力とEC環境の整備により、参入しやすい市場です。日本製品への信頼も厚く、初めての越境ECにも適した国と言えるでしょう。本記事では、シンガポール市場の魅力や消費動向を紹介してまいります。
シンガポールの基本情報
シンガポールの人口は約591万人(2023年時点)です。多民族国家であり、英語・中国語(簡体字・繁体字)・マレー語・タミル語が使用されています。英語が公用語として広く使われているため、日本企業にとっても言語面での参入ハードルが低いのが特長です。
1人当たりGDPは84,734ドル(2023年時点)で、日本(33,806ドル)の約2.5倍となっています。高い購買力を背景に、質の高い商品や海外ブランドへのニーズも強く、ECでもプレミアム商品が支持されやすい傾向があります。
また、インターネット普及率は91%と非常に高水準で、デジタル環境が整っており、オンラインショッピングが生活に密着しています。輸入先も中国、マレーシア、アメリカ、台湾など多岐にわたり、海外製品への関心が高いマーケットと言えるでしょう。
参考:IMF(International Monetary Fund)を元に作成
現在、日本円はシンガポールドル(以下SGD)に対してコロナ前と比べ、約42%の円安(2024年時点)となっており、シンガポールの消費者にとっては日本の商品が割安に見える状況です。
例えば、3,000円の商品は以前なら約SGD37.5でしたが、2024年時点では約SGD26.3で購入が可能です。シンガポールの消費者から見ると同じ3,000円の商品を約SGD11もお得に買い物ができます。
この為替状況は、日本からの輸出、そして越境ECでの販売にとって大きな追い風です。まさに今が、シンガポール市場に進出する絶好のタイミングと言えるでしょう。
参考)みずほ銀行ヒストリカルデータ(月中平均データ:仲値)を元に算出 https://www.mizuhobank.co.jp/market/historical/index.html
なぜ今、シンガポールなのか?―3つのデータが語る真実
日本企業にとって、東南アジアへの販路拡大はもはや“選択肢”ではなく“戦略”になりつつあります。中でも、特に注目すべきマーケットがシンガポールです。
「国土も人口も小さいのに、なぜシンガポール?」 そう疑問に思われた方も多いかもしれません。
しかし、最新の訪日・消費・親日度データを見れば、シンガポール市場の魅力は明白です。本記事では、3つの観点からその理由をデータベースで解説し、なぜ今シンガポール市場が熱いのかを紐解いていきます。
2024年、過去最高の訪日数を記録したシンガポール人旅行者
2024年、日本を訪れたシンガポール人旅行客は69万人と、過去最高を記録しました。この数字はシンガポールの人口の約8人に1人が日本に訪れたことを意味しており、いかに日本がシンガポール人にとって魅力的な渡航先であるかがうかがえます。
参考)JNTO(日本政府観光局)訪日外客統計 時系列推移表を元に作成 https://www.jnto.go.jp/statistics/data/visitors-statistics/
コロナ禍を経てもなお、再び日本への熱狂的な関心が戻ってきていることは、日本ブランドへの根強い信頼と人気の証明ともいえます。
一人あたり7万8千円超の買い物代 ― 圧倒的な購買力
2024年の訪日シンガポール人の国内総消費額は2,008億円に達し、そのうち買い物代は約4分の1の525億円を占めています。 そして注目すべきは、旅行者一人あたりの買い物代です。
その金額は、なんと78,070円/人。 これは訪日客数1位の韓国の2.7倍という圧倒的な水準です。
つまり、「人数は少ないが、一人あたりの消費が極めて大きい」のがシンガポール市場の特長です。これは、単価が高めの商品やブランド品、日本製のこだわり商品にとって大きなビジネスチャンスを意味します。
また、訪日中に気に入った商品を帰国後もオンラインで買いたいというニーズも年々高まっており、越境ECによるフォローアップ販売は非常に有効な手段です。
参考) 観光庁:インバウンド消費動向調査 https://www.mlit.go.jp/kankocho/tokei_hakusyo/gaikokujinshohidoko.html
JNTO(日本政府観光局):訪日外客統計 時系列推移表
https://www.jnto.go.jp/statistics/data/visitors-statistics/
好感度96.2%!日本に対する圧倒的な親近感
「日本が好きですか?」という質問に対し、シンガポール人の96.2%が「大好き」または「好き」と回答しています。
参考)アウンコンサルティング株式会社:日本の好感度についてを元に作成 https://www.auncon.co.jp/press/release/2024-06-13/
この親日度の高さは世界トップクラスであり、日本文化や日本製品に対して好意的な姿勢が浸透している証拠です。 特に以下のようなジャンルは、シンガポール市場で高い人気を誇ります。
- 日本の美容・健康グッズ
- 健康食品、サプリメント
- 和食材やスナック菓子
- 高品質な日用品・文房具
- 工芸品、伝統雑貨
- アニメ・キャラクターグッズ
つまり、「日本から来た」というだけで、一定の信頼と購買意欲を引き出すことができるのがこの市場なのです。
シンガポールのEC市場規模やオンライン購入における人気商品
年間EC総売上114億米ドル超えへ──急拡大するシンガポールのオンライン市場
シンガポールのEC市場は、東南アジアでも屈指の成長スピードを誇ります。
2025年には、年間EC総売上が114.5億米ドル(約1.7兆円)に達する見込みであり、これは2017年の16.2億米ドルと比べて約7倍に拡大する驚異的な成長率を示しています。
この背景には、スマートフォンの普及、キャッシュレス決済の浸透、物流インフラの発展、そしてコロナ禍による購買行動の変化が挙げられます。
オンラインショッピングは日常に定着し、消費者は価格だけでなく利便性や安心感を重視してECを活用するようになっています。 この急成長の波に乗ることで、日本企業にとってもビジネスチャンスが大きく広がります。
参考)Singa Life Biz:シンガポールのEC市場規模と成長率を元に作成 https://singalife-biz.com/guide/ecsite8/
注目カテゴリー①:美容・パーソナルケア用品──成長を続ける“美”への投資
美容やパーソナルケアへの関心が高いシンガポールでは、同市場の規模が2023年の12.45億米ドルから2033年には13.65億米ドルへと、今後も堅調に拡大すると予測されています。
特に日本のスキンケアやコスメは、品質の高さや肌へのやさしさから強い支持を受けており、敏感肌・エイジングケア・オーガニック処方などへの関心は年々高まっています。
長期的な成長市場である美容分野は、日本ブランドにとって中長期的な展開が見込める注目カテゴリです。
参考)SPHERICAL INSIGHTS:Singapore Beauty & Personal Care Market Insights Forecasts to 2033を元に作成 https://www.sphericalinsights.com/reports/singapore-beauty-and-personal-care-market
注目カテゴリー②:健康食品・サプリメント──オンライン購入率が5倍に拡大
シンガポールでは、健康意識の高まりを背景に、サプリメントや栄養補助食品の需要が継続的に増加しています。 ビタミン・ミネラルの国内売上は、今後5年間で年平均3.89%のペースで伸長し、2027年には2億8百万米ドルに達すると予想されています。
さらに注目すべきは、オンライン購入比率の急上昇です。 2017年時点ではわずか6.4%だったのが、2025年には33.6%と5倍以上に拡大する見込みとなっており、ECによる健康食品販売が“主戦場”となりつつあることを示しています。
この分野でも、日本製サプリメントの信頼性・機能性は競争優位のポイントです。
参考)JETRO:健康関連食品調査(シンガポール) https://www.jetro.go.jp/world/reports/2023/02/74dc32d015494f4b.html
注目カテゴリー③:アパレル・化粧品──越境EC実施率No.1はシンガポール
Shopee Japanがアパレル・化粧品EC事業者を対象に実施した調査によると、シンガポールは越境EC実施率が最も高い国として挙げられています。 63.1%の事業者がシンガポールで販売展開を行っており、マレーシア(58.3%)やタイ(44.0%)を上回る結果となっています。
これは、シンガポール市場が既に「実績ある越境先」として多くの企業に選ばれていることの証であり、日本製品が現地消費者に高く受け入れられていることを裏付けるデータでもあります。
すでに多くの企業が進出している一方で、ジャンル・ターゲット別に見ればまだまだ空白地帯も多く、後発でも十分に勝機があるマーケットです。
参考)ショッピージャパン:アパレル・化粧品の越境ECへの意識調査 https://shopee.jp/research/2023-01-25/
注目カテゴリー④:日本食品──“ジャパンブランド”が生活の一部に
日本食への親近感は、いまや文化としてシンガポール社会に根付いています。 **日本食品に特化したECサイト「MoguShop」**の存在や、日本語のキャッチコピーが使われているプロモーションからも、現地での日本食人気の高さがうかがえます。
取り扱い商品も幅広く、スナック菓子・酒類・インスタント食品・調味料などの日常品が人気です。特にCalbee、KitKat、久保田などの“定番銘柄”は繰り返し購入される傾向にあります。
こうした商品は、リピート性が高く、価格帯も明確で、送料を含めても現地で受け入れられやすいため、越境ECと非常に相性が良いと言えるでしょう。
参考)Mogu Shop:https://mogushop.asia/
まとめ
東南アジア市場の中でも、シンガポールは「コンパクトながら、高い収益性を誇る」越境ECの戦略拠点であると、あらためて実感いただけたのではないでしょうか。
購買力の高い消費者、デジタル環境の整備、そして日本ブランドへの圧倒的な信頼感―― これらが揃った市場は、他に類を見ないと言えるでしょう。
シンガポール向け越境EC支援サービスはこちら https://sterfield.co.jp/shopee/
Author Profile

TAKAHIRO FUKUDA
営業担当をしています。
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