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インバウンドと越境ECの関係

インバウンドと越境ECの関係

はじめに

近年、日本を訪れる外国人旅行者、いわゆる「インバウンド」の存在感は年々高まっています。新型コロナウイルス感染症の影響で一時的に訪日客数は大幅に減少しましたが、2023年以降は急速に回復し、観光地や都市部では外国人観光客の姿を日常的に見かけるようになりました。 さらに2024年には、訪日外国人数が年間3,600万人を突破し、コロナ前の水準を上回る勢いで回復。円安効果、航空路線の拡大なども追い風となり、インバウンド消費額も8兆円を超え過去最高水準に達しています。

インバウンドの経済効果は、宿泊・交通・飲食・観光体験などの「現地消費」にとどまりません。旅行者が日本で購入した商品や体験をきっかけに、帰国後も日本の商品やサービスに関心を持ち続けるケースが増えています。 この「旅アト需要」を的確に取り込むための有力な手段として注目されているのが越境ECです。

越境ECは、訪日中に知った商品を帰国後もオンラインで購入できる環境を提供し、旅行の感動や購買体験を持続させます。単発の旅行消費を継続的な売上へとつなげられるため、インバウンドと越境ECは密接かつ相互補完的な関係にあるといえるでしょう。

インバウンドの現況

訪日外国人の回復状況

観光庁の発表によると、2024年の訪日外国人数は約3,686万人に達し、過去最高記録となりました。 国別では以下のような傾向が見られます。

  • 韓国:週末や短期滞在の需要が堅調
  • 台湾、香港:リピーター率が高く、地方観光地にも足を伸ばす傾向
  • 中国:団体旅行の再開により回復基調
  • 東南アジア(タイ、ベトナム、フィリピン等):航空便増加で安定的に増加
  • 欧米豪:長期滞在・高単価消費が特徴

このように市場は多様化しており、旅行スタイルや消費行動も国・地域によって大きく異なります。

インバウンド消費の変化

かつての「爆買い」ブームでは、家電や化粧品、ブランド品といったモノ消費が中心でしたが、現在は「コト消費」の比率が増加。文化体験、自然観光、食体験、地域イベントへの参加など、体験価値を求める傾向が強まっています。 しかし、モノ消費が減ったわけではなく、食品や日用品、化粧品などの「消耗品」や「嗜好品」は依然として高い需要があります。

インバウンドの課題

現地での消費は旅行期間に依存するため、以下の制約が存在します。

  • 購入量や重量の制限(飛行機の手荷物制限など)
  • 賞味期限や保存方法の問題(食品など)
  • 帰国後に同じ商品を入手できない不便さ
  • 店舗やブランドがオンライン販売を行っていないケース

これらの課題は、訪日後の顧客接点を失う要因となっており、リピーター化の機会を逃している企業も少なくありません。

インバウンドをさらに活かすために(越境ECの活用)

越境ECとは何か

越境ECとは、国境を越えて商品やサービスを販売する電子商取引です。日本企業が海外の消費者へ直接販売できるほか、現地のECモールを通じて販売する方法もあります。 訪日客が旅行中に購入・体験した商品を、帰国後もオンラインで購入できるようにすることで、顧客との関係を長期的に維持できます。

インバウンド×越境ECの相乗効果

1. 認知から購買へのスムーズな移行 実物を手に取り品質を確認した上での購入経験は、その後のオンライン購入につながりやすい。 2. ブランドロイヤルティの醸成 帰国後も商品が手に入ることで、ブランドへの愛着が継続。 3. 口コミ・SNS拡散効果 購入者がSNSで商品を紹介し、その国の友人や家族が興味を持つという波及効果。 4. シーズン・地域を問わない販売 観光シーズンや現地の店舗展開に左右されず、年間を通じた売上確保が可能。

店舗と越境ECの連動施策

  • 店頭レジや商品タグに越境ECサイトのQRコードを掲載
  • 免税カウンターで「帰国後の購入案内カード」を配布
  • スタッフが現地語で越境ECの利用方法を説明
  • 試供品配布とオンライン購入クーポンのセット配布

これらの施策により、訪日体験から帰国後の購買への移行をスムーズにできます。

旅アトに欠かせない越境EC

「旅アト消費」の重要性

「旅アト消費」とは、旅行後にその土地や文化に関連する商品・サービスを購入する消費行動のことです。特にインバウンドでは、旅アト消費がブランドのファン化や継続的な売上拡大に直結します。 例えば、日本で飲んだ抹茶ラテが忘れられず、帰国後に越境ECで抹茶パウダーを購入するケースなど。

越境ECで広がる可能性

  • 再購入の促進:食品・化粧品・健康食品などのリピート需要を獲得
  • ギフト需要の取り込み:帰国後に知人へのお土産として追加購入
  • ファンコミュニティ形成:購入者向けニュースレターやSNS交流による囲い込み
  • 定期購入モデル:サブスクリプションで安定売上を確保

成功事例

  • 地方酒蔵:訪日客に試飲体験を提供し、その場で越境EC登録を促進。帰国後の定期購入につなげる。
  • 和菓子メーカー:店頭で越境ECの割引クーポンを配布。帰国後のギフト需要を取り込む。
  • 化粧品ブランド:SNS広告と越境ECを連動させ、帰国後もブランドストーリーを発信。

おわりに

インバウンド需要は今後も拡大が見込まれますが、現地での一度きりの消費で終わらせるのはもったいない話です。旅行者が持ち帰るのは「商品」だけでなく、「体験」「感動」「信頼」です。

これらを帰国後も継続的な購買につなげるためには、越境ECの導入と活用が不可欠****Boldとなります。越境ECは単なる販売チャネルではなく、訪日観光の体験価値を延長し、顧客との関係を長期化させる“架け橋”です。インバウンドと越境ECを組み合わせた戦略は、日本の地域産業やブランドを世界へ広め、持続可能なビジネスモデルを築く上で大きな武器となります。

「旅アト」需要を意識した越境EC戦略を構築できれば、インバウンドの経済効果は何倍にも広がるでしょう。訪日観光と越境EC、この二つの融合は企業の成長を支えるカギとなります。

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Author Profile

著者近影

MAKOTO TAJIRI

-越境ECコンサルタント- 貿易・国際物流分野において、営業・新規ビジネス開発・貿易実務に従事。 国際物流企業→総合コンサルティングファームを経てスターフィールド入社。 日本企業の海外輸出相談経験を持つことから、貿易・国際物流・事業構築を得意分野としています。 趣味はスイーツ(食べること専門)、愛犬と散歩、ドライブ。

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