STERFIELD

ネットショッピングの返品とそれが与える環境への影響とは?

ネットショッピングの返品とそれが与える環境への影響とは?

はじめに

近年、オンラインショッピングの普及に伴い、返品率が急増しています。消費者の利便性が高まる一方で、小売業者には莫大なコストをもたらし、環境にも深刻な影響を与えているのです。ある報告書によると、オンラインショッピングの返品は、小売業者に数十億ドルの費用をかけるだけでなく、大気中に大量の二酸化炭素を放出し、大量の廃棄物を埋立地に投棄しているといいます。

返品の経済的コスト

CleanHub(ブランドが環境にポジティブな影響を与えるためのソリューションを提供するドイツの企業)の報告によれば、2022年にはオンライン小売業者が返品により8160億ドルのコストを負担しました。これは、オンラインで購入された商品の最大30%が返品されているためであり、実店舗での返品率の3倍に相当します。この結果、年間で2400万トンの二酸化炭素が排出されています。

それほどの影響を生んだ原因は、返品された商品は再販されることが少なく、再販よりも廃棄する方が安価であることが多いためでしょう。2022年には95億ポンドの返品商品が埋立地に送られたとのことです。実店舗での購入とは異なり、ネットショッピングでは購入の際に製品を実際に手に取って確認することができないため、サイズの不一致や品質、見た目などが期待通りでないということが生じやすいのは当然です。しかしだからといって、この状況を無視するわけにはいかないでしょう。

返品の管理

アメリカに拠点を置く500以上の小売業者を対象とした最近の調査によると、49%の小売業者が返品を深刻な問題と見なしており、特にホリデーシーズン中にはその傾向が強まります。返品管理企業goTRGのCEOセンダー・シャミス氏は、「オンラインショッピングの増加と返品ポリシーの容易さがこの傾向に貢献している」と述べています。返品の管理には多くのコストがかかり、商品をきれいな状態で再販するためには高度なインフラが必要です。そのため多くの小売業者は、返品商品を再販するのではなく、大幅に値下げしてリクイデーターに売却するか、廃棄してしまうことが多いのです。「返品商品が埋立地に送られるのを防ぐには、小売業者が循環型経済の参加者になるしかありません」。

環境への影響

CleanHubの報告書によると、オンラインショッピングは実店舗よりも4.8倍多くの包装廃棄物を生み出します。返品された商品はしばしば再包装され、再販の準備がされますが、全プラスチック包装廃棄物のうち91%が、最終的には埋立地行きになるか、環境を汚染することになります。

特にファッション業界では返品率が高く、衣類の返品率は平均で32%に達します。多くの顧客が衣類を試着したり、1回着用してから返品するため、再販が困難になり、結果的に多くが埋立地に送られます。

返品管理への投資

返品問題に対処するため、多くの小売業者が返品プロセスの強化に投資しています。過去1年間で75%の企業が返品管理に100万ドルから500万ドルを投資しており、返品率の低減や効率的な返品管理を目指しています。これにより、2022年には8160億ドルだった返品問題が2023年には7430億ドルに減少しました。

シャミス氏は、「小売業者は『keep it(返品無し返金)』、優良顧客、一部の払い戻し、即時交換、即時クレジット、追加のドロップオフオプションなどの機能を備えた動的な返品ソフトウェアを通じて革新的な返品戦略を展開するようになってきている」と述べています。このような取り組みにより、顧客満足度を向上させつつ、売上を確保することができます。

まとめ

オンラインショッピングの返品は経済的コストや環境への負担が大きい問題です。しかし、効果的な返品管理とサーキュラーエコノミーへの参加により、この問題は解決できる可能性があります。

以前フランス郵便局が荷物を受けったらその場で試着~返品を可能とする試みを紹介しましたが、環境負荷の低い返品や再販を小売業者やブランドも独自に導入していかなければならない段階に来ていると言えます。 小売業者が革新的な返品戦略を導入し、持続可能なショッピング環境を提供することで、返品による環境への影響を最小限に抑えることが求められているのです。

また消費者自身も、オンラインショッピングの便利さを享受する一方で、その裏にある問題にも目を向けることが重要なのではないでしょうか。

参考

https://www.ecommercetimes.com/story/e-commerce-returns-billion-dollar-burden-on-business-and-the-planet-177950.html

Author Profile

著者近影

TOMI

制作ディレクターとか進行管理とかリソース管理してます。 欧米もアジアも好きですが次は南米あたりに住みたい。

SHARE

合わせて読みたい