JETROレポートによるコロナ渦の越境EC、日本企業の動向
はじめに
JETROが海外ビジネスに関心の高い日本企業に対してアンケートを行い、レポートをまとめています。コロナ渦に日本企業がどのように海外展開を考えているかが示されている貴重なレポートです。
これによると、新型コロナの影響を受け、すでに海外進出をしている企業の輸出拡大意欲が大きく減退する一方で、「今後、新たに取り組みたい」とする企業の比率は、4年ぶりに増加に転じています。今後の海外展開では、越境ECでの進出を重視している回答の割合が多く見られました。
本記事では、特に越境ECに関する回答を中心に紹介します。
現在の越境ECの状況
EC利用企業のうち45%が越境ECを活用
ECの活用実績がある企業のうち、45.5%が日本国内から海外向けの越境ECを活用していると回答しています。また、越境ECの利用率は、大企業(34.8%)に比べ、中小企業(47.0%)が10%ポイント以上高いです。(本文22ページ)
中小企業は自社サイトでの越境ECが目立つ
海外販売でECを利用する際の発送方法については、国内自社サイトでの販売(35.4%)が最多。ただし、規模別にみると、中小企業では国内自社サイト(37.6%)が多い一方、大企業は一般貿易型のEC販売(37.5%)を挙げる割合が高いです。(本文23ページ)
今後の動向
7割が海外ビジネスを見直し、越境ECなどデジタル活用に活路
コロナ渦で海外ビジネスリスクが顕在化する中、海外事業戦略や組織体制等を見直す(見直した)企業は約7割となっています。見直し方針では、「販売戦略の見直し」が42.5%で、特に中小企業(44.3%)がその必要性を訴えています。
販売戦略見直しの具体的な方針では、バーチャル展示会や越境EC等に取り組む企業の割合がいずれも3割を超え、デジタル活用による販路開拓に取り組む企業の割合が高いことを示しています。
越境ECへの着手は2021年度
新たな販売戦略に着手するタイミングとしては、バーチャル展示会が2020年に開始するという回答が多く(61.6%)、一方越境ECは、2021年に40.2%と高い数値が出ています。販売網、販売先を見直したあとに越境ECに着手したいという傾向が見えます。(本文60ページ)
まとめ・考察
コロナ渦での各企業の海外進出の動向を紹介しました。傾向としては、海外市場の期待は大きいが本格的な進出はまだ行えていない企業が多いようです。まずは販売戦略や企業構造を見直し、そののちに越境ECなどを行っていく計画のようです。
この傾向は、弊社へいただくご相談とも一致しています。
2010年台の越境ECブームのころよりも、現在はより長期的なスパンで進出計画を立てられる企業が多いように見受けられます。テスト販売という言葉をあまり企業側が使わなくなり、利益を上げるための仕組みを整えることを優先しています。
越境ECがただの流行の施策という認識は終わり、日本企業としてそれ無しでは事業計画がなりたたないものになりつつあると感じます。
Author Profile
HASHIMOTOHIROKI
1984年香川県生まれ。 早稲田大学第一文学部哲学専修卒。 三味線奏者、豆腐屋、八百屋を経て、現在はスターフィールド株式会社で、あらゆる日本企業を世界進出させるべく越境ECの普及に力を注ぐ。 特に中国、台湾向けECカート導入がメイン業務。
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