経産省「電子商取引に関する市場調査」2021年版を解説!
はじめに
「電子商取引に関する市場調査」が7月30日に発表されました。
例年4-5月頃の発表だったのですが、コロナの影響か昨年に続き7月末と遅い発表となりました。
今年も、簡単に概要をまとめてみました。他の年のデータとも比較しながらご覧ください。
国内EC市場
概要
2020年のEC市場規模は19兆2,779億円となり、2019年の19兆3,609億円と比べ減少するという驚きの結果となりました。ですが、今回調査結果の表現方法が、例年のものから変更されているため、正確に比較できるよう独自に表を作成してみました。
「B. サービス系分野」の大幅減少が主因のようです。報告書では以下のように分析されています。
サービス系分野の BtoC-EC 市場規模の減少は、同分野で最も市場規模の大きい旅行サービスが約6割減であることが大きく響いた。また、飲食サービス、チケット販売も相当の落ち込みであった。一方、今年度フードデリバリーサービスの BtoC-EC 市場規模推計を行ったところ、3,487 億円と大きな市場規模であることがわかった。
フードデリバリーサービスはコロナ禍で最も伸びた産業の1つであり、3,487億円という数字は初めて公的機関から発表された市場規模と思われます。今までECとはほぼ無縁だった、外食産業のEC化という点で大きな意味がある統計データであり、その大きさは個人的には非常に驚きました。
コロナ前の外食産業の市場規模は、2019年が約34兆円であったため、その内の1%がEC化したといえます。
一方「A. 物販系分野」の成長率については21.71%の数字を記録し、2018年から2019年が8.09%だったことを考えると驚異的な伸び率であるといえるでしょう。これに伴いEC化率は8.08%と前年より1.32増加、昨年どの0.43から大きく成長しました。
「C. デジタル系分野」も昨年度伸び率5.11%に対し今年度は14.90%となり、こちらも高い伸び率となりました。
報告書に記載は無く、独自に計算をしてみましたが、全体のEC市場規模はマイナス0.429の成長率になりました。フードデリバリービジネスの急進と、物販、デジタル販売の好調をもってしても、旅行サービスへの大打撃から、EC市場全体ではマイナス成長。改めてコロナショックの怖さを思い知らされる結果です。
越境EC
日本・米国・中国 3 ヵ国間の越境 EC 市場規模
毎度おなじみのこちらの図を見ると、日本から両国購入額合計は2兆9,226億円となり、昨年度の2兆5,592億円から14.2%成長したことがわかります。日本国内での物販のEC化も進んでいますが、それと同時に越境ECも同じくらいの成長率で伸びているのが分かります。
EC市場規模国別ランキング
こちらも毎度おなじみのグラフ。こちそも中国の独走状態が止まらないことがわかります。2〜10位の合計が1兆5,285億USDなので、中国はその1.5倍を超える市場規模です。今年度、国の順位に関しては大きな変化はありませんでしたが、インドが1つ順位を上げ、ロシアがランク外となった代わりに、スペインがランクインしました。
ポテンシャル推計値
昨年は、2027年に4兆8,561USDに拡大するとの予想が発表されていましたが、今年は2026年にはほぼ同額である4兆8,200億USDまで拡大するという発表に代わっていました。世界的なECの伸びを考慮して、このような数値になったのだと考えられます。
越境ECでの購入先トップ 3
こちらは、本年度から掲載されるようになった新しい統計データで、非常に参考になるデータと思われます。各国からの購入先として中国の存在感の大きさがわかります。
新型コロナウィルスの影響
昨年度の報告書ではわずか2回しか登場しなかった「コロナ」というワードが、今年度の報告書には119回も登場しており、コロナの影響は無視できないくらい大きいものだと分かります。
そのせいか、昨年度まで「BtoC-EC 市場トレンド」という名称だった中項目が、今年度は「新型コロナウイルス感染症拡大下の国内 BtoC-EC 市場」となって分析がされていました。
そこまで目新しいものはありませんが、
- Baseなど無料系プラットフォームの伸び
- サブスクリプションサービスの定着化
- 実店舗の位置づけ・役割の変化(O2O)
が今年度新たに追加されていました。
まとめ
2021年度は、EC市場全体の伸び率がマイナスになるという衝撃的な結果となりました。しかし、物販や越境EC全体としての伸びは堅調であり、引き続き高い成長率を維持するという見方が強い予想データが多い調査結果となっていました。
一方、それに比例してトラブルも増加傾向にあり、クレジットカードを始めとする決済の厳格化や、各国での越境ECに対する対応など、周辺環境の整備が市場として求められているという印象を強く受けました。このあたりは一個人、一企業での対応は難しいため、全体の流れを常にキャッチし、業界全体が一丸となって健全な体制づくりをすることが大切だと思いました。
Author Profile
HOSHINO
ECのことを中心に書きたいと思います。 ネタが無いときはプログラムやデザインのことも書きます。
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