インバウンドが再び盛り上がる中
タビアト越境ECの可能性はあるのか
はじめに
政府は今年6月以降、入国者数の上限撤廃、ビザ(査証)の免除、個人旅行の解禁、3回のワクチン接種を条件に出発前72時間以内の陰性証明書の提出義務をなくすなど入国制限措置を次々に緩和しています。
これは日本のインバウンド業界にとっては強力な追い風となっているようです。
日本経済再生の目玉はインバウンド復活 2030年に年間6000万人目標は不可能ではない(杉村富生)
インバウンドが劇的に復活していくなか、越境ECはそこにどう関わっていけるだろうかということを考えています。
コロナ前にインバウンドが興隆していたときは、タビマエ、タビナカ、タビアトという3つの区分があり、観光客が帰国したあと(タビアト)に越境ECが存在していました。
具体的には、タビマエやタビナカで接点を得た観光客が、帰国後も越境ECで日本の商品を取り寄せることができるというスキームです。
しかしながら、一部の大手小売や百貨店が、中国のこれまた大手モールに旗艦店をもってタビアト施策(越境EC)を行っているという事例がちらほら聞こえてくるだけで、実際のところタビアトとしての越境ECがどうなっているのか、外国人観光客や国内事業者に求められるのか、私にはわかりませんでした。
Google検索で「インバウンド タビアト」と検索しても、検索1ページ目に出てくるのは半分以上がコロナ前に書かれた記事です。しかも事例ではなく、概念を紹介したものです。
越境EC業界とインバウンド業界は近いようで遠い
越境ECはインバウンドと対比して「アウトバウンド」と呼ばれることもありますが、この2つの業界は近いようで遠い業界です。
近そうに見えるところとしては、同じく日本企業向けの海外に関わるサービスであること。
また、海外向けの広告代理店が、インバウンドと越境ECの両方のサービスを持っていることもあります。
加えてなぜか交流会などでも一緒になることが多いです。
しかしながら、越境ECとインバウンドが施策として混ざり合うことは非常にまれです。
「なぜインバウンドと越境ECが混じり合わないのか? インバウンド業界で越境ECは一緒に提案しないのはなぜか?」を今回インバウンド支援会社数社に質問しました。
皆さんご好意で詳しく教えてくれたのですが、興味深かった点としては、口を揃えて「インバウンドと越境ECは、担当部署が違う」と言っていました。
インバウンド施策を広告代理店を通して行うことが出来るのは、ある程度の大企業ですが、
そのような大企業だとECとインバウンドは扱う部署が違っていて、
部署を横断しての連携はほとんどないとのことでした。
また、その傾向は自治体も同様とのこと。
な、なるほど…!!
タビアトで越境ECが成立する条件とは
上記の事情は日本企業/自治体固有の問題ですが、
そもそもの問題として「旅行から帰ってきたあとに、わざわざECで購入するか?」という点もあります。
自分の旅行体験を振り返ったとき、「あ〜先月行った国のお土産品やっぱ買えばよかったなぁ。あ、越境ECで買えるぞ!ポチッ!」とはなかなかならないのではないかと思います。
身も蓋もないですが。
すごくネガティブなことばかり言っていますが、やはり越境ECが成立するのは、インバウンドのタビアトでも、そうでなくても「越境ECで買う理由(必然性)があるもの」でしかないと思います。
その意味では、下記の2つの例が考える糸口になるかもしれません。
2020年7月1日、中国政府から海南島(海南省)における離島免税の新政策「海南自由貿易港建設総体方案」が発表、施行されました。
それまでの政策と比較すると、1人当たりの免税割当額が年間3万元から10万元(約170万円)と大幅に増額され、離島免税商品の種類も酒類などが追加となり38種類から45種類へと増えました。
さらに、オンラインでも免税購入が可能で、離島後180日以内なら免税で購入が出来るなどの制度改正が行われました。
ECでも免税購入が可能というのは、政府の力技からなる政策次第なので、努力でなんとかできるものではないですが、確かに「越境ECで買う理由(必然性)があるもの」ではあります。
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2つ目の例は、ちょっと理想主義的かもしれませんが、
日本の農業体験ツアーに参加した旅行者が、帰国後にも越境ECで農産物を購入するというスキームです。
この例も、それぞれわざわざ「越境ECで買う理由(必然性)があるもの」です。
このくらいの訴求力がないと、タビアトでの越境ECは厳しいかもしれません。
もうちょっと考えてみたいと思います。
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スターフィールド編集部
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