STERFIELD

Amazon襲来でどうなる?
ポーランドのECモール事情

Amazon襲来でどうなる?<br>ポーランドのECモール事情<!--tomishige-->

はじめに

ヨーロッパ随一の親日国として有名な国、ポーランド。そうはいっても、なぜポーランドが親日なのか、首を傾げる人の方が多いかもしれません。「命のビザ」「杉原千畝」「ユダヤ難民」などのキーワードを聞けば、納得する人もいるでしょう。中東欧諸国の中では、日系企業の進出は進んでいる方ですが、まだまだ馴染みの薄い国と言わざるを得ません。

そんなポーランドに、満を持してAmazonが本格的に進出する準備に入ったとの一報が。今回はそんなポーランドのECモール事情を紹介していきたいと思います。

ポーランド基本情報

EU加盟国なのに、今までAmazonが進出していなかったの?と思われるかもしれませんが、それはポーランドのいくつかの特殊性に原因があるかもしれません。

ポーランド語

ポー=平ら、ランド=土地という名の通り、起伏の少ないこの国は、東西の文化が混ざり合う交流の地であるとともに、周りの大国から占領され続けるという苦難の歴史を抱えた土地でもあります。
そんな土地で使用されるポーランド語は、世界一難しい言葉の一つとも言われています。言語的にはスラヴ語派に属しているため、英語やラテン語派言語とは共通する言葉はほとんどなく、同じスラヴ語派であるロシア語がキリル文字を使用しているのに対し、ポーランド語はラテン文字で表記されます。
文法もかなり複雑で、母語話者であるポーランド人でも100%正しいポーランド語の運用は難しいと言われるほどです。それゆえ、海外企業が本格的にポーランドに進出しようとすると、まずはこの非常に高い言葉の壁にぶつかってしまうのです。

ポーランド通貨と貨幣価値

ポーランドは2004年にEUに加盟しましたが、通貨は自国通貨のズウォティを保ったままです。対外通貨(米ドル、ユーロ、円)に対する為替レートの上昇は、近年著しいものがありますが、それでも賃金水準は西欧諸国よりもかなり低く、貨幣価値は日本の3分の1程度です(新卒の月給が7万円前後)。
この物価の差を考えると、外国の、特に西欧諸国から物を買うというのは、一部の富裕層を除いて、それほど日常的なこととは言えないでしょう。

ポーランドのEC事情とは

ポーランド発EC Allegro

※画像は公式サイトのキャプチャ

上記のような文化的・経済的背景から、これまでポーランドEC市場は、2014年にECモールとしてのサービスをスタートした「Allegro」の独壇場でした。Allegroは、ポーランドのAmazonとも呼ばれ、少なくとも月間PV数で言えば、世界でもっとも人気のあるウェブサイトトップ10に入るほどの、巨大オンラインマーケットです(2020年2月)。

また、近隣のEU諸国には軒並みAmazonが進出しており、英語やドイツ語を解する若者であれば、Allegroに目当ての品がなくとも、それを利用すれば事足りたという事情もあります。
そうは言っても、1970年以前に生まれたポーランド人は、ロシア語(またはドイツ語)が第二外国語であり、それ以降の生まれだからといって、英語が堪能とは限りません。また、EUという同じ経済圏内の国であっても、外国からの配送に時間がかかるのは当然です。周りのポーランド人に聞いてみましたが、やはりネットショッピングならAllegroが一番だと考える人ばかりでした。

Amazon.plはポーランド進出に自信あり!?

2021年1月26日、AmazonはAmazon.plのローンチ作業を開始したことを発表しました。すでに販売パートナーに対して、Amazon.plへのビジネス登録も始まっています。EU拡大担当副社長のAlex Ootes氏は、「Amazonは長年にわたり、ポーランドの顧客に向け、ヨーロッパの様々な店舗で販売パートナーをサポートしてきたが、次のステップは、ポーランドに完全な消費者向け小売サービスを提供することだ」と述べ、「顧客にとって最も大切な、低価格・豊富な品揃え・短納期に焦点を当てれば、ポーランドの顧客の信頼を容易に獲得できるだろう」と自信を見せています。

一方、現在1,200万人を超えるアクティブバイヤーと、117,000人のマーチャントを抱えるAllegroのCEOであるFrancois Nuyts氏は、国際的に拡大している準備は出来ていると語り、Amazonのポーランド進出を恐れてはいないようでした。「我々があらゆる競合他社より優れているとは言わないが、非常にうまくやっていると自信を持っている点はたくさんある」(2020年10月)。

まとめ

今回はポーランドのEC事情についてお伝えしました。日本人にとってなじみのない国ということは、まだまだビジネスチャンスがあるとも言えます。実際、日本が大好きで、日本製品が買いたいのに買えない!という声も多く聞きます。言語の壁に阻まれて諦めていたり、Allegroでの出店経験がないという企業の中から、Amazonなら…と考えるところも出てくるかもしれませんね。


《参考》amazon , Ecommerce News Europe

Author Profile

著者近影

TOMI

制作ディレクターとか進行管理とかリソース管理してます。 欧米もアジアも好きですが次は南米あたりに住みたい。

SHARE

合わせて読みたい