STERFIELD
ビジネス2026.10.15

【台湾法改正】2026年7月スタート!職場ハラスメント新法を分かりやすく解説

近年、台湾では労働者の権利意識の高まりとともに、職場環境の改善が強く求められています。これまで明確な法律上の定義が存在しなかった「職場ハラスメント(職場霸凌)」ですが、2025年12月2日に立法院にて「職業安全衛生法」の改正案が可決されました。

本改正では新たに《職業安全衛生法(職安法)》における「職場霸凌防治專章(職場ハラスメント防止専章)」が創設され、2026年7月1日より正式に施行されます。これは2013年以来最大規模の法改正であり、台湾に現地法人や支社を持つすべての企業にとって重要なコンプライアンス事項となります。

職場ハラスメント(職場霸凌)とは?

改正後の職業安全衛生法第22条の1により、職場ハラスメントは以下のように定義されています。

【法的定義】 労働者が労働場所において職務を執行する際、事業単位の者が職務や権勢などの関係を利用し、業務上の必要かつ合理的な範囲を超えて、継続的に侵犯、脅迫、無視、孤立、侮辱その他の不当な言語や行為を行い、それにより労働者の身心健康に危害を及ぼすこと。ただし、状況が重大な場合は、継続的な発生を必須としない。

ここで非常に重要なポイントは「状況が重大な場合は、継続的な発生を必須としない」という但し書きです。つまり、大勢の前での著しい侮辱や極端な人格否定など、重大な事象であれば1回限りの発生であっても職場ハラスメントと認定される可能性があります。

「適正な指導」と「ハラスメント」の境界線

管理職が業績改善を求めたりミスを指摘したりすることは正当な管理権の範囲内です。新法における最大の判断基準は「業務上の必要かつ合理的な範囲を超えているかどうか」です。

  • 適正な指導: 業績向上や業務改善のための合理的目標の設定、具体的事実に基づくミスの指摘など。
  • ハラスメント: 人格攻撃、見せしめのような暴言・罵倒、追い出しを目的とした達成不可能な業務の押し付け、意図的な孤立化など。

また、ハラスメントは上司から部下への行為に限らず、同僚間や部下から上司に対する行為であっても、職務や権勢関係を利用した場合は適用対象となります。

職場ハラスメント認定の5つの構成要件

新法に基づきハラスメントと認定されるためには、以下の5つの要件を同時に満たす必要があります。

  1. 職場関連性: 労働場所(リモートワーク、LINE・Teams等のチャットツールを含む)で発生し、職務に関連していること
  2. 権勢関係: 職務上の優位性や権勢などを利用して行われていること
  3. 逸脱性: 業務上の必要性と合理的な範囲を明らかに超えていること
  4. 継続性: 繰り返し・継続的に行われていること(※重大なケースは単発でも可)
  5. 身心危害: 労働者の身体的・精神的健康に実質的な危害を及ぼしていること
タイプ(不当な行為樣態)具体的にどんなこと?
1. 細かい嫌味・イチャモン
(吹毛求疵)
些細なことにいちいちケチをつけ、小さなミスを大げさに騒ぎ立てたり曲解したりして責め続ける。
2. 仲間外れ・孤立させる
(孤立、排擠)
周りの社員を巻き込んで特定の社員を孤立させ、重要な仕事や職場の集まりから排除して無視・嫌がらせをする。
3. 大勢の前で恥をかかせる
(公然羞辱)
他の社員の前で大声で怒鳴る、侮辱する、脅す、または人格を否定するようなひどい言葉を浴びせる。
4. 努力や存在を否定する
(否定價值)
いつも批判ばかりして社員の貢献や努力を一切認めず、部下の存在価値や仕事の意義を否定し続ける。
5. 休ませない・研修の邪魔
(不准假/阻礙訓練)
正当な理由もないのに休暇申請を許可しなかったり、必要な教育研修への参加を邪魔・阻止したりする。
6. 無理な仕事・無意味な雑用
(過重或無意義工作)
キャパシティを超える過重な仕事を押し付けたり、意図的に本人の職務と全く関係ない無意味な作業ばかり命じたりする。
7. 無茶な目標の強制
(設定不可能的目標)
非現実的な仕事目標を課したり、わざと締め切りを極端に短くして仕事の完成を妨害したりする。

企業(事業主)に課される法的義務と処理フロー

新法では、事業規模に応じて企業に明確な予防・処置義務が課されます。

① 申告窓口の設置と対応

事業規模に関わらず、ハラスメントの申告を受けた企業はただちに保護および調査手続きを開始しなければなりません。

② 政府システム(WBRS 職場霸凌案件通報系統)への通報義務

申告を受理した翌日から7営業日以内に、労働部の「WBRS職場ハラスメント案件通報システム」へ案件情報を登録する必要があります。

③ 厳格な処理期限

  • 受理決定: 申告受領後 10営業日以内
  • 調査委員会の立ち上げ: 受理後 15営業日以内
  • 調査完了・決定: 受理後 2〜3ヶ月以内

④ 最高責任者が加害者の場合の特例

被申告者が会社の「最高責任者(総経理や実質経営者など)」である場合、被害者は内部手続きをスキップして直接地方労働局へ外部申告を行うことができます。

違反時の罰則・ペナルティ

法的義務を怠った場合や違反が発生した場合、企業および個人に対して以下の行政罰(過料)が科されます。

違反内容(違反情意)過料の範囲(罰則金額)加重の上限
防止措置や申告窓口の未設置(期限内の是正なし)
(未訂定防治措施或申訴管道,限期未改善)
3万〜75万台湾ドル
(約15万〜360万円)
※職安法 第45条
最高 112.5万台湾ドル
(約540万円)
防止義務違反により職業病や仕事関連の疾患が発生
(違反防治義務致發生職業病或工作相關疾病)
5万〜300万台湾ドル
(約24万〜1,440万円)
※職安法 第43条
最高 450万台湾ドル
(約2,160万円)
最高責任者(代表者等)自身がハラスメント行為者と認定
(最高負責人經認定為霸凌行為人)
1万〜100万台湾ドル
(約4.8万〜480万円)
※職安法 第46条(個人への罰則)
—

💡 台湾で働くみんなを守るために(外資系企業へのメッセージ)

台湾には、たくさんの外国人労働者の方々も働いています。残念ながら、一部には「ブラック企業」のような問題が発生してしまうことも……。ですが今の台湾は、労働保険の制度や社員を守る仕組みがとっても充実しています!

台湾に進出している外資系企業や日系企業の皆さんも、うっかり法律を知らないままだと、思わぬ違反やペナルティ(罰金)につながってしまうかも……!?

「知らなかった!」で損をしてしまわないように、ぜひこの新しい法律をチェックして、みんなが笑顔で安心して働ける素敵な職場環境を作っていきましょう!

日系企業・台湾支社が今すぐ取り組むべき対応

2026年7月1日の施行に向けて、以下のステップで準備を進めることを推奨します。

  1. 就業規則(社内ルール)の見直し: ハラスメントの禁止ルールや処分の決まりを社内ルール(就業規則)に付け加えます。
  2. 相談窓口のお知らせ: 「困った時はどこに連絡すればいいか」を明確にして、社員みんなにしっかり伝えます。
  3. 上司や駐在員向けの研修: 日本と台湾の考え方の違いや、「正しい指導」と「嫌がらせ」の境界線についてみんなで勉強します。

おわりに

今回の法改正で、台湾にある会社は「社員を守る責任」がもっと厳しくなります。

特に日系企業では、言葉の壁や文化の違いから、上司と現地スタッフの間で「これって指導?それとも嫌がらせ?」と認識のズレが起きやすいんですよね。

「指導のつもりだった」「文化の違いだから」では済まされないケースも増えていきます。

お互いがストレスなく、気持ちよく安心して働ける職場にするために、会社も上司も早めにルールを見直して整えていきましょう!

📚 参考資料(参考リンク)

本記事の作成にあたり、以下の公式資料および専門法務解説を参照しています。

WRITER

Yoshika

Global EC Operation部 台湾支店に所属しております。市場を俯瞰した分析力を活かし、EC業界の課題を見極め、価値ある提案につなげることを得意としています。

この著者の記事を見る

CONTACT

記事の内容について
相談したい方へ

実際の進め方は、状況を伺ってからご提案します。

2営業日以内にご返信します
資料ダウンロード無料相談に申し込む